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質疑応答

質間者

1.乳酸を溜まりにくくするにはどうすればよいのか。

 そもそも解糖により乳酸を発生するわけであるからこれを止めることは出来ませんが、血液循環を良くすることで乳酸の溜まりにくい状況が出来ると思ってください。また有酸素運動をして赤筋の割合を多くすることが乳酸の蓄積率を低くする事につながります。

質問者

2.「肩こり」も乳酸の蓄積のために痛みや荷重感ができるのでしようか。

 当然「肩こり」も乳酸は蓄積しているでしょう。そもそも乳酸が蓄積すると筋肉の収縮運動がしにくい状態が出来ます。細胞に 0.3% 乳酸が蓄積すれば筋肉細胞は収縮できなくなってしまいます。骨格筋においては赤筋と白筋があります。赤筋はミオグロビンやミトコンドリアが豊富にありますので好気的代謝が行われ易いのでおのずと乳酸は蓄積しにくいのですが、白筋はそれらが少なく無酸素下で強大な力を発揮する筋肉ですので持続的な激しい緊張を起こせば無酸素となり解糖が促進されます。よって白筋に乳酸が蓄積しやすいと言うことになります。そこで、赤筋なのですが基本的に乳酸が蓄積しにくいので白筋が収縮出来なくても赤筋は収縮出来ます。骨格筋一単位としての収縮は出来ていますが収縮しにくい状態であることは間違いないでしょう。よって筋肉内に血液の鬱帯やスパズムが発生し易い状態となり痛みや荷重感が生まれるものと理解しております。

質間者

3. 乳酸は悪いものではなく、後にエネルギー源として利用されると聞いたことがあります。スポーツ活動後のクーリングダウンで有酸素運動を行うのは、溜まった乳酸を消費することで疲労除去効果が得られると考えてよいのでしょうか。

 

 確かに乳酸は悪いものではありません筋疲労を起こさせる物質であるだけです。またエネルギーに再利用されるのも別の物質に換えて利用するわけで乳酸を直接エネルギーにしている訳ではありません。

運動後、クーリングダウンする事で有酸素運動を行うのは局所の好気的代謝を促進することになるので乳酸は減少します。しかし、筋細胞に蓄積している乳酸の殆どは血中に流れ出すのです。つまり筋細胞内における好気的乳酸代謝によるエネルギー化は極わずかであり血行の促進により筋細胞内の乳酸は血中へ移動しているだけであり、そのすべてをエネルギー化している訳ではありません。当然、血中へ乳酸という酸が増加する訳ですから生体にとって解毒する必要性が生まれそれを肝臓のコリ代謝を用いて糖に再変換することになるのです。当然、解毒にはエネルギーをかなり「消費」しますからクーリングダウンした後は体をゆっくりと休める事が必要となり、疲労除去効果が現れてくるわけです。(質問内容の「溜まった乳酸を消費」なんですが、乳酸を消費する事は生化学的に考えられません。「減少」ではないでしょうか?また、答えになっているでしょうか?)

 

質間者

4.乳酸は筋硬結を起こしてしまう疲労物質なのでしようか。

筋硬結イコール溜まった乳酸?

 筋細胞内に乳酸が蓄積すれば筋は疲労します。乳酸は酸である為、細胞を障害しうる存在です。上記にあるように細胞に 0.3% 乳酸が蓄積すれば筋肉細胞は収縮できなくなってしまいます。この時点で乳酸は疲労物質であることに疑問は持たないでしょう。

 「筋硬結イコール溜まった乳酸?」本論中ではこのように感じてしまうのかもしれませんが、筋硬結は乳酸が蓄積することで筋収縮を障害し二次的に血液の鬱帯やスパズムが発生し筋硬結となるものであります。

質間者

5.ヘトヘトの状態でもしばらく休んでから運動ができるのは何故ですか。

 運動をしてヘトヘトになったときは心拍数と呼吸数の増大が起こっていると思います。と言うことは局所への酸素量及び血流量が増大しますので好気的代謝が促進されまた、蓄積した乳酸が血中へ流れます。筋肉を休めることでエネルギー消費が少なくなることは解糖による乳酸の発生が少なくなることにも繋がります。よって、しばらく休んだらまた運動が可能となるわけです。

質問者

6.死後硬直の後、体が弛んだとき乳酸はどうなっているのか。

 本論中では乳酸が蓄積し死後硬直が発生すると簡単に書いてしまいましたが、もう少し詳しく説明します。

 死後、筋肉内に酸素の供給が断たれると、解糖作用による乳酸蓄積のために、 pH7.0 附近から pH5.5 附近の酸性に低下、硬くなります。 これは乳酸ができて蓄積する為と、ATPが分解するときにできる水素イオンがp H を低下させる為です。生体の筋肉は pH7.2 位ですが,死後最終的に到達するp H は 5.4 〜 5.5 となります。細胞は脆弱化し ATP 濃度の減少とカルシウムイオンが筋細胞内に漏れ出しアクチンとミオシンが結合、アクトミオシンが作られ硬直が始まります。そして硬直完了時には ATP は消失しています。

 その後、更に脆弱化は進みアクトミオシンの解裂が起き硬直解除が起こりますがそのシステムはいまだ統一的な答えはありません。しかし、乳酸はこの時点で上記にあるように pH5.5 まで下がるほどに乳酸が存在していると言う事になります。硬直解除後の乳酸は私にはわかりませんが畜産学における「熟成」に係って来るのではないかと思います。

質間者

7. 『乳酸は疲労回復物質である』という研究や報告があるが、これについて先生の意見はどうなのでしようか。

 私の考えとして乳酸はやはり筋疲労物質であると言う考えは捨てるべきでないと思うのです。実際乳酸が蓄積すれば筋は収縮する事が出来なくなってしまう訳ですから疲労物質に変わりない訳であり、疲労を回復させる為に発生する訳ではないと言う事を念頭に考えるべきではないかと思うのです。少し譲って考えるならば筋組織を障害させない為の存在であると言うならば納得もいきますが、疲労を回復させる物質であると言うのは言い過ぎではないかと思うのです。どうしても、疲労物質ではないと言いたいならば疲労回復物質と銘打つよりも「乳酸は筋収縮抑制物質兼、エネルギー回帰物質である」とするべきでしょう。あくまでも私の考えですが。

 

 このように多くの質問がございました。しかし、真実を曲げることは出来ません。学生諸君も絶えず知ろうとする欲求だけは忘れずに持っていて欲しいものですが、この乳酸の話のみならず、間違った知識を真実であるとして心に刻んでいるものも多くいると思います。まずは、教科書を熟読し疑問に思うことを羅列、そして疑問を疑問として残さない。これしか我々には方法がないのです。そうやって一生涯勉強をせねばならないのが我々、柔道整復師、「ほねつぎ」なのです。

 

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